
日本二千六百年史
大川周明
昭和戦前の国民に多大な影響を与えた思想家。・・・東京帝国大学卒業後、アジア解放・国家改造の実践に奔走、革新将校と接近、昭和7年五・一五事件に連座し服役。昭和12年に出所すると、すでに勃発していた日中戦争から、さらに日米戦争へと突き進まんとする国家的機運の中で、アジア主義・日本精神復興を軸とする言論活動を精力的に展開、同14年にその集大成として「日本二千六百年史」を上梓するや、本書は官憲の弾圧を受けつつも、たちまち数十万部を売り尽くす大ベストセラーとなる。また、日米戦争のへき頭、NHKラジオで連続十二回演説し、国民・将兵の士気を鼓舞した。このため、戦後、日本思想界の象徴とみなされ民間人ながらA級戦犯に指定された。・・・
通史としての日本歴史は、大学の受験勉強を最後に一度もしていない。
序論に
ー吾らは永遠より永遠に渡る日本的生命の一断面である。・・・如何なる世、如何なる国と言わず、改造または革新の必要は、国民的生命の衰弱・頽廃から生まれる。生命の衰弱・頽廃は善なるものの力弱り悪なるものの横行跋扈することによる。故に之を改造するためには、国民的生命の衷に潜む偉大なるもの・高貴なるもの・堅実なるものを認識し、之を復興せしむることによって・・・ー
そして、大化の改新・鎌倉幕府・明治維新という政治上の大きな転換について原因と結果をわかりやすく説明している。
また、朝鮮半島から伝わる大陸の文明を、日本がどのように消化・吸収し、そしてさらに昇華させたかについて考察している。
この本は、日清・日露・第一次世界大戦と勝利し続け、世界の「一等国」となった当時の日本人が持ったであろう精神の高揚を感じることができる。
なかなか面白い本だ。